特別対談

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2017年8月3日(木)~4日(金)インテックス大阪 10:00~17:00

まず初めに、教育現場におけるICTの普及度について、関西地区の現在の状況は、いかがでしょうか?
赤堀:データ的には、関西、関東で大きな差は見られないものの、実感としては、西高東低であるような印象を持っています。

永井:大阪市を例にとると、市内の全小・中学校に電子黒板、LAN環境下で外部にアクセスできるPCを整備し、タブレットも各校40台を配布しています。他の市町村も程度の差はあるが、概ね大阪市と同様の傾向。各自治体がモデル校を設置・活用し、その成果を各校にフィードバックしています。

赤堀:大阪市は前市長の橋下さんが、ICTの活用が重要だと言っているのをテレビで見ました。その影響は、あったんですか?

永井:ありましたね。私は平成26年3月まで大阪市の教育長をしていましたので、橋下市長とは約2年間、一緒に仕事をしていましたが、当時、佐賀県の取組に刺激を受けて、大阪もやろうとなりました。大阪市は子供の学力が非常に厳しい。授業に集中させることが難しい。そんな時にタブレットを活用し、動画などを見せることで、子供の興味・関心を呼び起こすことができればと思いました。

赤堀:あくまで土台は授業なので、ちゃんと伝える仕組み、そのための教材が無いといけない。永井さんは、むしろ、それを引っ張っていった役割だったのでは?

永井:そうです。環境整備は行政の役割であり、教員の方々をバックアップしなければいけないと思っています。

赤堀:東京都も非常に力が入っています。いくつかのモデル校に、1年間だけ貸し出して効果を検証し、次の年度には、別のモデル校に貸し出す方法で、3年間の実証研究を行っています。なかなか良い結果を生んでいるようで、まず体験してみないとわからないのでは無いでしょうか?

現場の先生方にとってのICT活用のメリット、及び問題点について、お聞かせ下さい。
永井:子どもを授業に集中させるために、教材は非常に重要です。そのため教師は教材づくりに時間をかけてきました。しかし、ベテラン教師の多くが退職していく中で、そのノウハウが継承されれば良いのですが、形としては継承されても実践面では覚束ないというケースもあります。そのフォローにICTが一役買っており、例えば算数で行われる立体と展開図の関係も動画を使って子供たちの前で見せることができます。実際にハサミやノリを使った作業を経験させることができないマイナス面もありますが・・・

赤堀:かつてはPCを使って学習するということには賛否両論がありました。特に保護者が遊んでいるのか勉強しているのかわからないという感覚を持っていたのではないでしょうか。それがタブレットになり、一般家庭でも生活で使うようになってきたので、違和感が少しずつなくなってきているように思います。一方で、最も困っているのがトラブルです。途中で動かなくなった、見えなくなった、子供だったら落としてしまったなど、35人学級であれば、予備も含めて40台くらい用意していないと危ない。ICTのアドバイザー、コーディネーターなど、支援する環境が必要。大学では、日常的な道具で、文字通りいつでもどこでも使っています。ゼミ、レポートなどに必須なので、特に言う必要もないですが。1993年にカリフォルニア大学アーバイン校に客員教授で半年間滞在しましたが、青空の元で緑の芝生のキャンパスで談笑している学生の横には、必ずPCがあって、これからは小中学校もこのキャンパスモデルになると思います。

永井:大阪市では、大学の先生やメーカーの担当者、ベテランの教員などからなるサポートチームを構成し、問題解決に当たっていました。導入当初は関連機器のバッテリーが途中で切れるようなこともありましたが、徐々に改善されていったようです。

赤堀:先ほどの話ですが、日本の先生は子供思いですね。海外の先生と比べて宿題も良く見ているし、良い教材があれば使おうとしている。日本の先生の技術を海外に輸出するべきなので、今、サウジアラビアと交渉しています。サウジアラビアの先生が日本に来て研修すると、世界各国の中でも日本の先生や学校の雰囲気など、日本ほどすごい教育は無いと言います。ただ、彼らが一点、日本の教育が諸外国に比べて弱いと感じているところがあって、それは、先生が上手すぎて子供をコントロールしてしまうことらしい。結局、今、先生方が求めていることも、子供たちが教えられるのではなく、より自主的に学習することを、ICTの活用によっていかに実現するかということだと思います。タブレットを渡して教材があったら、子供たちがグループで勝手に学習を始める。そういうことが日本の将来にとって重要ではないでしょうか?

永井:確かに、ベテランの先生方はクラス全員が同じ結論になる指導技術を身に着けていますが、今求められているのは、決められた時間の中で様々な意見を交わしながら、自分たちの考えをまとめる、いわゆる協働学習の指導技術です。一定のまとまりを引き出す為には高いスキルが必要になりますが、そういった面でもICTは非常に有効だと思います。

永井理事長は、大阪市教育長在任中の、また、赤堀会長には、現在の活動について、お教え下さい。
永井:大阪の学力調査結果は全国平均よりも学力が低いという課題があり、この問題を解消する為に、平成22年度から小・中9年間を見通した計画を進めました。大阪市では中学校で私立に行く子供は少なく、大半は公立中学校に進みます。小学校での学力のつまずきを中学校に持ち越したとしても復習できるというシステムの構築を目指しました。3校の9年間一体型の学校が誕生したのも大きな成果だと思います。少子化でスペースに余裕があるということもありますが、9年間を通しての教育が重要だということが立証されてきていると言えます。また、6年計画で、今年やっと全小・中学校にエアコンが入ることになり、夏休みを含めて学校で教育をするという環境も整います。タブレットについては1校あたり40台で運用しています。コストダウンが進み、タブレットも各家庭が買える時代が来れば、家庭学習も一層充実すると思います。

赤堀:日本教育情報化振興会には約200社の企業が所属していますが、団体としての主な役割は関連省庁との橋渡しです。自主的な活動としては全国でセミナーを開催しているし、文部科学省系の受託事業もしています。小さい市町村の教育委員会の情報局担当の指導員は、予算・事業計画など様々な責任を負っており、忙しくて大変です。それをサポートする為に専門家の先生方を派遣したり、アドバイスをするという支援活動が必要なのです。これからの教育は学校を支える環境が重要だと思いますが、我々の団体にはメーカー、通信系の企業、コンテンツ会社など様々なジャンルの企業が入会しているので、連携して学校を支えていきたい。

そんなお二人がタッグを組んで、「関西教育ICT展」の初開催に向けて尽力して来られました。きっかけは何だったんですか?
永井:大阪国際経済振興センターは、大阪市からの受託によりインテックス大阪を管理する団体でしたが、平成25年度から、我々が大阪市に賃料を払って、より自由度の高い運営をすることに変わったのです。その流れを受けて、我々も自主企画として、大阪経済の活性化に寄与するようなBtoBの展示会を立ち上げていこうとしています。教育関連について、関西では大規模な展示会は開催されていなかったので、展示会の開催実績が豊富なテレビ大阪グループとタッグを組んで、開催しようということになりました。

赤堀:我々の団体にもテレビ大阪グループからお話がありました。かねてから自分達が主体になって展示会を主催したいという思いがありましたが、事務所が東京にあるので、東京中心に考えていた部分があったのかもしれません。今回、こういう形で永井理事長やテレビ大阪グループとご一緒できて、大変嬉しく思っています。是非、継続して行きたい。

永井:周辺の関係者と話していても、立ち上げの勢いは充分に感じています。今後も「大阪の夏は教育ICT展」というイメージで浸透させて行きたいと思っています。

赤堀:8月で教育関係者が来場しやすいということもあるし、是非、成功させたい。私たちの自主事業でご協力頂いている先生方にも喜んで頂いていますし、文部科学省や総務省の方にもお越し頂きますが、初めての関西での大規模ICT展ということで、非常に期待されています。

来場される教育関係の方々に、見て頂きたいポイントをお教え下さい。
永井:セミナーはもちろんですが、企業展示の中には授業に活用できるヒントがたくさんあります。実践に役立つ展示会なので、是非、ご来場頂きたい。

赤堀:企業出展の中には、コンテンツを見せるだけでなく授業でどう使うかというデモ的な展示が多く見られます。ICT活用というのは料理に例えると食材のようなもの。これまでは和食ばかり食べていたところに、突然、ヨーロッパの食材が入って来たんですが、結局、料理人の腕が悪いと大した料理ができない。やはり基本は授業をどうするかという設計力なので、料理人の腕の見せ所です。そういう視点でたくさんの食材をご覧頂き、どういう風に料理しようかと、できれば学校にも持ち帰って頂いて、職員室の話題にして欲しい。

永井:団塊の世代の退職に伴って、いわゆる職人技を引き継ぐのも大事だが、若い先生方には、ICTの活用方法を身につけて、子供たちの血となり肉となる料理を作れるレベルに早く達して欲しい。そこから先は先生方の腕の見せ所ですね。

赤堀:日本の教科書は非常によくできているが、諸外国に行くと教科書会社によって、コンテンツや指導方法がかなり異なります。今回の展示を見ても色んなアプリがたくさんでてくるので、まだまだ可能性は広がるように思います。 私は、かつて教育学部の教員を6年間勤めましたが、当時、研究室にタブレットを10台近く置いていたら、多くの学生がしょっちゅう触りに来て、色んな教材のアプリをダウンロードしていました。特に特別支援の分野では、役立つアプリがたくさんあったように思います。

永井:特別支援教育は、特にICTとの親和性が高いですね。ICTを使って子供達ひとりひとりに合わせた指導ができます。また教育ICT展の開催にあたって、いくつかの大学に伺いましたが、大学教育でもICTの活用がかなり進んでいます。先ほど教員養成課程での学生の話がありましたが、知識の活用に重きを置く大学ならではと思います。教育ICT展では素材としてのアプリが多数展示されますので是非ご覧いただきたいと思います。

最後に、「関西教育ICT展」の今後の展開、将来像についてお聞かせください。
永井:現場での実践をキーワードに、出展者の方と現場の先生方で情報交換し、それを元に製品をブラッシュアップしてもらう。こんなことをしたい、どうしたらできるかをICT展の開催を通して実現し、ソフト・ハードが進化していけたら良いと思います。

赤堀:大阪で開催できることが良かったと思いますが、是非、関西一円の先生方にご来場頂きたい。経済は東京と大阪に集中しているので地方は元気がありませんが、ICTをよく活用している学校として、茨城県つくば市立の春日学園義務教育学校があります。ここのICT活用は非常に素晴らしく、児童生徒数は1,600人を超えており、近隣の保護者からの入学希望が殺到しています。全ての先生がICTを活用し、不登校者は0、正確に言うと不登校の子供も登校するようになります。私も見学に行きましたが、子供たちは希望に、夢に燃えていました。若者、学校が元気にならないと地域活性化ができません。是非、近隣の地域の先生方も、お越し頂き、教育ICTが地域活性化の起爆剤になるような、そんな展開にもつながる展示会として、お役に立っていければ良いと思います。

永井:小中学校は、地域コミュニティの中心的存在でもありますからね。

赤堀:私は埼玉県所沢市に住んでいて、所沢中学校の評議員をしていますが、地域の人達は、学校を非常に良く見ています。色んな面で、学校をみんなで見守っていこうという気持ちになると、元気になります。ICTを核にして、地方が元気になると非常に嬉しい。その為にも、毎年、開催を継続していかなければなりませんね。

永井:授業の話ばかりしてきましたが、学校の事務・校務、生徒の管理業務が占めるウエイトも高い。大阪市では校務支援にICTを導入することで校務に費やす時間が大幅に減り、子供をケアする時間が増えるという効果を実現しました。この展示会は授業でのICT活用だけがテーマではなく、先生方の業務を軽減するというのも重要なテーマです。

※この特別対談は第1回関西教育ICT展(2016年8月4・5日)の開催を記念して行われたものです。
※上記で使用している会場風景の画像は第1回関西教育ICT展(2016年8月4・5日)の模様を撮影したものです。

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